揚げ浜式製塩の塩づくり

揚げ浜式製塩の塩づくり

海水運び海水運び

1.海水運び

朝の5:00、仁江(にえ)海岸の海水を汲み上げるところから始まります。
塩田村のある能登半島珠洲の海は寒流と暖流が混ざり合い、プランクトンが豊富。
また、潮の流れが速いので海水はキレイな状態を保ちます。

【用語解説】

かえ桶(かえおけ)

かえ桶(かえおけ)

浜士(はまじ):揚げ浜式製塩の責任者。
現在の浜士は登谷良一(とやりょういち)。1947年生まれ。
1996年から、製塩の仕事に携わっている。

かえ桶(かえおけ):海水を汲む時の桶。
桶1つの容量は約36リットル。

肩荷棒(にないぼう):かえ桶を担ぐ時に使う桐の丸い棒。
長さは150cm程度。

海水を引桶に

2.海水を引桶に

海から汲んだ海水を引桶に溜めていきます。
引桶に入る海水は約800リットル。
海水を撒き始めるまでに海岸を10回程度往復します。

【用語解説】

引桶(しこけ)

引桶(しこけ):汲んだ海水を溜めるための桶。
大きさは直径150〜200cm×深さ50cm程度。

潮撒き

3.潮撒き

ご存知、海水を塩田に撒きます。塩田1枚の面積は約50坪(165m²)。
“潮汲み3年、潮撒き10年”と言われ、約600リットルの海水を約40分間かけて、均等に撒きます。
*夏期は2度、同じ量を撒きます
海水が砂に落ちる時に発する音(ザザッ、ザザッ)は一定のリズムを奏でます。

【用語解説】

打桶(おちょけ)

打桶(おちょけ):塩田に海水を撒く際に使用する砲弾型の手桶。
直径30〜40cm×長さ40〜60cm程度の大きさ。
桶一つの容量は36リットル程度。

砂を乾燥させる

4.砂を乾燥させる

撒いた海水の水分を早く乾燥させるために「細攫え(こまざらえ)」という道具で塩田の砂に筋目を入れます。
ここまでの作業は朝の6:00までに終え、その後8時間程度、太陽にあてて乾かします。

【用語解説】

細攫え(こまざらえ):竹の棒を櫛の様に組んだ道具。
砂に筋目を入れ、陽にあたる表面積を多くする。また、固くなった砂地を柔らかくする際にも使用。長さは180cm程度。

細攫え(こまざらえ)
細攫え(こまざらえ)
カン砂集め

5.カン砂集め

8時間程度乾燥させた砂を塩田の中央まで集めます。

【用語解説】

柄振(いぶり):砂を集めるための木製の道具。長さは180cm程度。

カン砂集め
柄振(いぶり)
垂舟(たれふね)の組み立て

6.垂舟(たれふね)の組み立て

集めた砂を入れる「垂舟(たれふね)」と呼ばれる木製の箱を組み立てます。

【用語解説】

垂舟(たれふね):かん砂を入れ、その上から海水を注いで砂に付いている塩の結晶を採るための四角形の箱形の装置。
底には竹製の目皿を張り、その上にむしろを敷く。

垂舟の組み立て
垂舟(たれふね)
カン砂を垂舟へ入れる

7.カン砂を垂舟へ入れる

集めた砂を「しっぱつ(または、こみ)」と呼ばれる道具で垂舟へ入れます。

【用語解説】

しっぱつ(または、こみ):集めた砂を垂舟へ入れる時に使う道具。
垂舟から砂を出す時には、別の道具、「はね」を使用。長さは150cm程度。

カン砂を垂舟へ入れる
しっぱつ(または、こみ、はね)
垂舟でかん水を採る垂舟でかん水を採る

8.垂舟でかん水を採る

砂の入った垂舟の上から海水を流し込み、砂に付いている塩の結晶を垂舟下部の溜池に溜めます。
その溜まったかん水を釜屋まで運んで、釜炊きが始まります。

垂舟を解体し、砂を戻す

9.垂舟を解体し、砂を戻す

かん水を採った後の砂は「はね」を使って垂舟から塩田へ戻し、砂の厚みを均一にするため、再び、細攫えで砂に筋目を入れ、翌日の作業に備えます。

垂舟を解体し、砂を戻す垂舟を解体し、砂を戻す
ここからは釜屋での作業
釜屋かん水を6時間程度荒焚き

1.かん水を6時間程度荒焚き

かん水を容量約600リットルの平釜で、塩分濃度24%程度になるまで約6時間煮詰めます。

【用語解説】

釜屋(かまや):3間(5.4m)×4間(7.2m)の大きさの茅葺きの建物。
中には平釜、胴桶などが置かれています。
釜(かま):厚さ1〜1.5cm、直径2m、深さ30cmの平底の鉄鋳物。
江戸時代中期までは奥能登の穴水町中居の鋳物師が作成。その後、富山県高岡市で生産されたものを使用している。

釜屋(かまや)
釜(かま)
胴桶(どうけ)

2.荒焚きしたかん水をろ過

荒焚きしたかん水を一日程度冷まし、竹炭・黒炭・砂が層になった胴桶でろ過します。

【用語解説】

胴桶(どうけ):かん水を溜め、ろ過する桶。木灰・砂・黒炭・竹炭などが層で入っている。

かん水を16時間程度本焚きかん水を16時間程度本焚き

3.かん水を16時間程度本焚き

胴桶でろ過したかん水を再び釜一杯にし、16時間程度煮詰めます。
焚き詰めていくと、釜の表面にソフトボール程度の塩の山(結晶)が並びます。
その後、釜の表面はソフトボールから「八重桜」のような形に変わり、「とんがりボウシ」の形になった時点で火を出します。
その後、20分から30分間、余熱を加えて、本焚きが終わります。
本焚きでの火加減が塩の味・風味・品質を決めます。炎の様子、余熱の予測、塩の形の変化から火のタイミングを見極め、このタイミングのわずかな違いが、味に大きく影響します。

【用語解説】

薪(たきぎ):薪には主に“火が柔らかい”杉の間伐材を使用。沸騰までは火力の強い松の木を使用。
もちろん、薪を切り出すのも浜士の仕事。

薪(たきぎ)
薪(たきぎ)
塩とにがりを釜から採り出す

4.塩とにがりを釜から採り出す

焚きあがった塩を釜から採り出し、い出場(でば)に入れ、4日間寝かせて、苦汁(にがり)を切ります。
苦汁は、い出場の底の傾斜路を通って溜まります。

【用語解説】

い出場(いでば)または塩床(しおどこ)

い出場(いでば)または塩床(しおどこ):焚きあがった塩から苦汁を分ける一時の貯蔵場。
苦汁(にがり):塩を作る際にできる余剰なミネラル分を多く含む粉末または液体。豆乳を豆腐に変える凝固剤として使用される。

不純物の除去と梱包不純物の除去と梱包

5.不純物の除去と梱包

苦汁を充分に落とした塩は釜屋隣の選別場で丁寧に不純物が取り除かれ、梱包されます。
塩の成分分析は毎年、行っています。
約600リットルの海水から、120kgの塩ができます。

完成品

完成!

こうやって、珠洲市仁江海岸の豊かな海がお塩になります。
500年以上続いている揚げ浜式製塩のお塩は塩辛さが少なく、豊かな海の旨みと甘みが口の中に広がります。

味わって見たい方は、こちらでご購入できます。

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